胸のドキドキが出てきてバイトに行きたくない。

僕はやがて店長と野球部系の先輩に恐怖を覚えるようになった。

 

「またミスをしたら怒られる・・・!!」そんなことがずっと頭の中をぐるぐる回る。

 

特に野球部系の先輩は体型もしっかりしてるので威圧感がすごい。ものすごい早口で、物事をすぐに判断し実行に移す。頭が切れる方なのだなとすぐに分かった。仕事ができる方なので、店長からもお気に入りのようだった。

 

店長は「先輩は大きな声で注意をするけど、あの人も昔はああやって先輩から注意を受けて覚えてきたの。それがあの人の教え方だから怖がらんでいいよ。」と言ってくれた。

そうなのかと思い「あ、はい!」と答えるも、やっぱり怖いものは怖かった。

 

そのうち「ああ、今日もバイトがあるのか。またミスして怒られるのかな〜?」と思うと胸がドキドキしてきた。

 

特にバイトに行く30分前くらいになると無意識でもドキドキし出して自分では止めることができない。それでも生活費のために行かないといけないので、ドキドキしながら自転車に乗ってバイト先へ出かけた。

 

バイトへ行く最中はなるべくバイトのことは考えないようにして店内に入る。

「おはようございます!」

と言い、バイト用の服に着替える。

 

今日もあの先輩はいる。

 

厨房に入ると「食洗機やっといてー」と先輩から指示がある。

 

怒ってはないのでその時は大丈夫だ。しかし忙しい時間がやってくるとやっぱり僕はもたもたしてしまった。

 

「何やってるの?じっとしてないで動いて!」

 

僕はやることはやっているはずなのに、しばらく立っていると怠けているように見えるのだろうか?いつも怒られていた。

 

「はい!」と言いつつ

何をやったら良いか分からずドキドキがどんどん高まる。

 

「あの、何をやったら良いですか?」

と聞くと

「はあ?分からないの?ドリンク入れて!」

と指示を出されて動く。

 

「はい!」と大きな声を出して急いでドリンクを入れる。

 

毎日怯えながらバイトをやっていた。

今思えばよくやっていたなーと思う。

 

お客さんが少なくなってきた時にまた店長に呼び出される。

「いつまでも突っ立ってちゃだめだよ。ちゃんと優先順位を考えて動いて。」

 

「はい。」

優先順位が分からないなんて言うことができない。

 

「周りの人がありがとうと言われるような仕事をしようよ。」

僕もそれはしようと心がけているけど、先に怒られることへの恐怖心が先立って、なかなか人への声かけやサポートができなくなってしまっていた。

 

ここで僕は集団行動が得意でないことを思い出した。

 

学生の頃は周りの輪に入ることもできなかったし、話も全然ついていけなくて、おしゃべりも11くらいでしかできなかった。

 

ましてやバイトは、3人以上の仲間がお互いにコミュニケーションを取り合って、息を合わせて料理を作る仕事。コミュニケーションすら上手いことできないのに、人と息を合わせるなんて到底不可能だと思い、僕はこのバイトは向いてない。と改めて思った。

 

僕はやがてバイトを辞めたいと思うようになった。

でも、辞めることができない。

 

なぜなら

一人暮らしなので生活費を稼がないといけないから。さらに、自由に出勤時間を変更でき、車がないので自宅からも近いという、自分の希望に一番マッチしていたバイトだったからだ。

 

こうして毎日ドキドキしながらの日々が3ヶ月目に突入しようとしていた。